アーティスト・イン・レジデンス2008 秋の特別展

HIGASHIJIMA TSUYOSHI
東島 毅 展
絵 ― Picture


 


 

展覧会期:2008年9月13日(土)‐10月13日(月・祝)

主催:国際芸術センター青森AIR実行委員会、青森市

 この度、秋のアーティスト・イン・レジデンス特別企画として、現代日本を代表する画家・東島毅の滞在制作による作品展を開催いたします。東島作品を最も特徴づけている、見るものを圧倒するような大画面の上に濃紺を基調とした静謐な色彩を湛えた作品は、内外で高い評価を受けています。また、東島の作品には、時として日記のように、あるいは落書きのように記された言葉や記号が描かれています。生活とともにある表現を標榜する東島の内なる思いが言葉ともなり、内面は東島の身体を通り抜け色と線との領域になって現われます。
 本展では、ACACにおける滞在生活の中で、大地、地を這う水、大地の高低差、方向や方角、空と地表など、東島が感じたリアリティを白いギャラリー空間に表出させます。絵画ならではの豊かさに満ちた表現に、ぜひ触れていただきたいと思います。

滞在の記録はこちらから>>


photo: Shi Kei


 
     
 
  
(左から)「影が光をもつとき。そしてやすらぎとしての相対。」2008/ 作業風景 /「かつての地上との接点」2008
 【関連事業】

■ アーティスト・トーク1(アーティストによるレクチャー)※終了しました。
「絵〜MOYA」
9月13日(土) 14:00―15:30
展示棟/AVルーム ※申し込み不要。直接会場へ

■ ワークショップ ※終了しました。
「空をつくる・地をえがく」
9月14日(日) 10:00―16:00
創作棟/ワークショップスタジオ
定 員:30名 (要申し込み)
申し込み締め切り:9月5日(金) ※申し込み多数の場合は抽選
材料費:300円
参加者が感じた空、大地を自分の好きな色に置き換え、自由に絵を描きます。

■ アーティスト・トーク2 (対談)
「約束の、絵〜Picture」 
東島毅×水沢勉(神奈川県立近代美術館 企画課長、横浜トリエンナーレ2008総合ディレクター)
10月4日(土) 14:00‐15:30
創作棟/講義室 ※入場無料。申し込み不要。直接会場へ

■ダンス公演
「約束」 
出演:木村玲奈
10月12日(日) 18:00
展示棟ギャラリーA ※入場無料。申し込み不要。直接会場へ

東島毅作品への新たなアプローチの試みとして。本展会場にてダンス公演を行います。
出演は、今年7月にイギリス/カーディフにあるアートセンター「チャプター」にてレジデンスを終えたばかりの、
青森市在住の若手ダンサー、木村玲奈。
この公演に参加するきっかけは、今年1月にACACで開催した、
イギリス人ダンサーで振付家のショーネッド・ヒューズによる
ワークショップに参加したことがきっかけでした。
ヒューズ氏は、ACACに1ヶ月滞在し、青森における人々の冬の生活様式、
津軽手踊りや三味線の音色などにインスパイアされた「Aomori Project」という作品を制作。
手踊りの組踊りからも着想を得、木村玲奈と2人で踊る振付をしました。
イギリスでの公演では、直前のヒューズ氏の体調不良のため、
急遽、木村は1人でステージに立つことになり、見事に踊りきりました。
このたび、大きな舞台を経験して帰国した木村が、初めて自身による振付作品に挑戦をします。
若きダンサーの新しい決意、そして東島の作品『約束としての絵』が響きあう空間、ダンスを、ぜひご覧下さい。


「約束」について―木村 玲奈

イギリスの振付家であるショーネッド・ヒューズのワークショップに参加したことがきっかけで、
7月にカーディフ(ウェールズ)で彼女の<Aomori Project>公演に参加しました。
2人で踊る振付だったのですが、直前になり一人で踊ることになりました。
今回、東島毅さんの作品の前で躍ることになり、実際の絵の前で動いてみたら、
なんだか誰かもう一人いるような気がしました。絵に自分が映るからだと思いますが、
ショーネッドと踊るはずだったのが一人になり、今でも一緒に動くような気がしているからかもしれません。
だから、一人だけど一人じゃない気持ちで、
そして、私とショーネッドとの約束のため、
これからのことを一つ一つ積み重ねていく気持ちで、
ダンスのタイトルを、東島さんの絵画の題名にもある「約束」にしました。

<木村玲奈>  KIMURA Reina
1982年 青森市生まれ、在住。 4歳より渋谷玲子のもとでバレエ、モダンダンスを始める。
青森県内や東北各地にて現代舞踊公演に出演。現代舞踊協会主催ワークショップに参加。
また、2004年から長内真理に指導を受ける。ダンスユニット<ウェーブ>でも活動中。
ジャンルにとらわれない自由な身体表現を目指す。

【東島毅 アーティスト・イン・レジデンスの記録】

真夏の8月から40日に渡る滞在中、画家・東島毅は何を考え、何をよりどころにして制作を続けていたのでしょうか。
ギャラリーに現われた深遠で静謐な作品の向こう側には、アーティストの熱い思いが隠されています。
表現する者にとっての葛藤、そして希望。滞在中に残された東島の「言葉」の一部を、ここでご紹介いたしましょう。

―――自然に対して働きかけ、領分としての線をひいてゆく。つまり建築における壁のような絵画を描く事で、自然に手を加え、分割し、居場所を構築していっている。作家の意思と人為的な行為は、次々と気付かなかった美を発見していく。それで、「絵・PICTURE」という展覧会のタイトルをつけている。


―――車で3日間かけて青森まで来たのは、緯度の変化を肌で感じ、青森まで来ることを含めた全体に、体を馴染ませるため。身体感覚の重要性。


―――青森
あるどこかへたどり着くまでのあいだ、目にした美しい風景や出会ったものなどを伝えるのが画家の役目。国や距離を越えた感覚をもって、緯度を突き破る。青森という、そこまでの距離を含めての場所と、縄文より続く歴史、その時間と空間を呼吸するため、部屋から出て野外で、つまり青森の中で制作する。そのような絵画の厚みであり、サイズであり、絵の前の空間までもが渾然としたごちゃまぜ絵画。


―――視線
ようやく目線を持ち上げられるようになった。今までは水平線をまっすぐに見るだけが精一杯だったが、今に至っては、眼の中で空と水と地面を混ぜられる。


―――地を這う水・グラデーション
日没の空のグラデーションのように、太陽が地平線に沈むように、あらゆるものごとが地中にずぶずぶと沈んでゆくような感覚がある。その地面の下では、いろいろなものごとが、水のような流れとなって這っている。


―――絵画・制作
自分にとって居心地の良い場所を創り出そうとしているのかもしれない。そのために壁のような絵画をえがいたり、マーキングをしたり(痕跡を残したり)するのかもしれない。たとえば北という方角は地球が決めたものだが、絵画に囲まれた空間の中で、私が、私にあうように北がどちらなのかを決めてもよい。


―――ヒューマンスケールを超えた作品のサイズやストロークは、意図ではなく必然。なぜなら絵画とはそういうものだから。大きなサイズに大きなストロークで描くことが、絵画と出会うところであり、絵画とはヒューマンスケールを超えているものだから、それ相応の行為をしているに過ぎない。

―――身体を移動させないとわからない絵。絵の近くに来ると全体が見えなくなる。記憶はその瞬間にあいまいとなり、肌が感じることとしてのみ立ち上がる。


―――(絵画におけるモダニズムの歴史として取りざたされるような)絵画内における奥行き、空間性よりも、絵画の「内部」とは、あるいは「外部」とは?を考えてみる。すると、少なくとも、私には絵画の前、画面の外で起こっている事物のことのほうが、ずっとリアルであることがわかってくる。

―――山へ運ぶ石をもう少し先へと運ぶ。ときどき転がり落ちることもある。そしてまた目標へと石を運ぶ。その繰り返しの中には新しい発見がある。その可能性とこれまで気づかなかった美との出会い。その出会いのためにもう一度、石を運ぶ。繰り返しのなかで瞬間は永遠と同義となる。

―――約束された絵画について
人間と人間とのあいだに交わされる約束、70年ほどの人生の中で、短く、死ねば終わり。絵画と人生との約束、画家が消滅した後も100年、200年と絵画は新しくあり、むしろ画家にとってはそこが勝負。永い約束、愛すべき約束のために身を投げ打っている。歴史のベクトルの中で責任を負うている。本当の絵画は、深遠で、品があり、ブルーの、深夜のような、永い時間をかけて説き伏せたい彼女。人間がつくる鎖(chain)として絵画は、約束はつながっていく。


 
   
 
 
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