野外彫刻

国際芸術センター青森では、常設の展示室がない代わりに、敷地内に野外作品が点在しています。野外彫刻として作られた作品、アーティスト・イン・レジデンスで制作されその後しばらく残っている作品などが混在しています。自然豊かな森の散策と共にお楽しみください。

野外彫刻散策路MAP

*森の中は、場所によってぬかるんでいる場合があります。ご注意下さい。
*冬期は雪のため道が閉鎖されたり、雪に埋まっていたりするなどして作品が見えないこともあります。ご了承ください。
*強い風が吹いている時は、枝などが落下し危険ですので、森の中へは入らないでください。

野外作品

村岡三郎(1928- 大阪)

《SALT》

鉄、塩、2001年(ACAC開館記念作品)

現代彫刻の表現では、素材に意味をもたせることによって、私たちに何かを語りかけてくるような作品が多くある。この作品に使われている「鉄」と「塩」から何を想像するだろうか。塩が鉄を酸化させ、やがて朽ちていく姿か。この作品は自然環境の中で、物質が時を経て変化していく姿の在り様を示している。

photo: KON Kazuaki

河口龍夫(1940- 兵庫)

《関係-時の杖》
《関係-時の庭》

ブロンズ、銅、真鍮、アクリル、2004年

河口龍夫は時間や言葉など眼に見えないものと物質の関係についてずっと考えてきた。ACACの入口近くの見返り広場と水のテラス脇の小さな広場にブロンズの杖を1本ずつ埋めた。地面の底深くに堆積する縄文の時間を感じるためである。見返り広場にはコンクリートの壁にブロンズの詩が刻まれ、もうひとつの「時間の庭」には鳥の巣箱や、7本の樹木にかけられた銅の輪やアクリルの階段が設けられた。それぞれ過去・現在・未来の時間に捧げられたものである。

photo: YAMAMOTO Tadasu

photo: YAMAMOTO Tadasu

パル・ペーター(1961- ルーマニア)

《アナモルフォーシス3(歩ける彫刻)》

石、ステンレススチール、2005年(2011年再制作)
(2005年秋AIR、2011年再考現学2)

この作品では、古くから使われている二つの技法、アナモルフォーシス(歪み絵)と古いヨーロッパの街並みに見られる石畳の技法が用いられている。地面に並べられた様々な種類の石は、中南米プレ・コロンビア時代の仮面から取られたイメージを再生し、それを鏡像として見せている。

photo: SHITAMICHI Motoyuki

鈴木正治(1919-2008 青森)

《八甲田山》

沼宮内産御影石、2002年
(2002年春AIR)

青森の自然と関わりあいながら生きている人間としての感性を形(石)におきかえることを制作の動機とし、自然のままの石の大きさ、形、質を生かしながら、そこにさらなる自然を表現する。表から見ると八甲田山が彫りこまれているこの作品は、裏側にまわると鈴木の代表的なモティーフの一つ「ゴディバ」が彫刻されている。馬にまたがる裸婦は、レディ・ゴディバの伝説に基づく。

photo: ANZAI Shigeo

バラニ・ゾルターン(1971- ハンガリー)

《丸石のある石壁とテーブル》

花崗岩、安山岩、2002年

《共存》

玄武岩、石英、2002年
(2002年北方都市会議INあおもり-AIR)

石との精神的つながりに重きを置くバラニは、制作においては常に石との非言語的対話を行い、それにより石が望む形に作品を作り出すと語る。展覧会に出品された「はめ込まれた丸石」シリーズとして制作されたうちの3点であるこれらの作品は、バラニの一貫したテーマである自然に守られている人間の姿、あるいは自然との共存が表れている。

シム・ムンセプ(1942- 韓国)

《Presentation》

松、御影石、2002年

7メートルもの半割の松ノ木と御影石を組ませて作った水路である。水は石や木の表面を伝わり流れて元に戻る。始めも終わりもない永遠の循環は生命の流れをつなげる環である。生に近い素材を組み合わせた形態は、舟のような橋げたのような、建築の礎台のようでもある。

photo: KON Kazuaki

若江 漢字(1944- 神奈川)

《森にある壁》

ステンレス、ワイヤー、ネオン、2004年

豊かな自然の中に、突然、人工物であるステンレスの壁が立っている。あえて人工的なものを置くことによって、自然はより豊かに、またステンレスは人工としての美しさがそれぞれ際立ってみえてくる。壁には赤い文字で「Non Ultra(超えるべからず)」、青い文字で「Plus Ultra(超えていけ)」という、相反するふたつの言葉がネオンサインとなって掲げられている。

イ・ソンテク(1932- 韓国)

《作られた自然》

石、鉄、木、ペンキ、2002年

この作品は1988年に青森で開かれた青函EXPO’88 記念「現代野外彫刻展」において入選作品として合浦公園に残されたものである。当時はふたつの形に分かれていたが、13年後にACACに移設されたときに、作家との話し合いでひとつにまとめられた。青森市近郊で採石された破砕されたままの石片が砲弾型に積み上げられた。再生された現在の形は高さ7m、直径4mとなった。上部には6本の筒状の銅管が張り出し、その中に周辺の森の枯れ木が差し込まれている。

中瀬 康志(1955- 青森)

《グッバイ・パパ、グッバイ・ママ》

鉄(番線を溶接)、2004年
(2004年春AIR)

細く長い方がお父さん、やや太く低い方がお母さん。この一対の男と女を表す姿は、生命のはじまりである人間の根元的な姿(アダムとイヴのように)ともとらえられる。

辻 けい(1953- 神奈川)

《青森――円2005》

2005年

円筒状の作品の内側の壁には、辻けいが染めた色鮮やかな糸の群れが塗り込まれている。空間に立ち空を見上げると、円形の空が見える。移りゆく時間、季節によって刻々と変化する空、風や空気を感じることができる。

photo: YAMAMOTO Tadasu

青木野枝(1958- 東京)

《雲谷-Ⅰ》

コールテン鋼、2002年

溶断されたバリの残る鉄を繰り返し積み重ねることで、鉄彫刻でありながらも空気感と軽やかさを併せ持つ作品を特徴とする。空気、水蒸気、放射能といった目には見えないけれども確かに存在するものへの関心と、青森の土地で作家が感じた光や影や空気の揺らぎが重なり合ってこの作品を生まれた。現在この《雲谷》シリーズは、静岡、山口などでも展開されている。

photo: KON Kazuaki

植松奎二(1947- 神戸)

《樹とともに-宙》

ステンレス、2003年

関西を拠点に活動を始め、1974年以降デュッセルドルフと関西を往復しながら制作を展開してきた。一貫して重力や引力、張力など空間の中に存在するあらわには見えない関係を作品によって見せる試みを続けている。樹木や石など自然の要素と金属の形態を組み合わせ、不思議な均衡関係で立っている円錐形や螺旋の彫刻をつくる。ここでは森の奥深くに1本だけステンレスの樹を立て、その周りの地面に螺旋形の土手を築いた。

photo: YAMAMOTO Tadasu

石岡豊美(1948- 青森)

《無題》

青森ヒバ、2003年
(2003年春AIR)

素材のもつ風合い、個性を生かし、自然と芸術の調和的な作品を作り上げる。巨大なヒバの抜根を使って制作された彫刻は、独特の有機的なフォルムを生かした作品となっている。1999年より青森市沢山地区に展開するアートフォーラム、沢山アート財産区企画に参加、中心的メンバーとして活躍する。

photo: YAMAMOTO Tadasu

土屋 公雄(1955- 福井)

《記憶の風景》

廃材(枕木)、2003年

土屋公雄は、物質に宿る人間の記憶をテーマにしてきた。360本もの枕木を使ったこの作品は、遠くに見える山並みと向かい合いながら、森をうねるフェンスのような形をしている。古い枕木は、かつて本州の終着駅であった青森の鉄道の歴史と重ねられている。

photo: YAMAMOTO Tadasu

コーネリア・コンラッズ(1957- ドイツ)

《隣人たち》

木材、鉄、アクリルガラス、カーテン、照明、2009年
(2009年秋AIR)

創作棟から宿泊棟へ向かう坂道を下っていくと、川を挟んで向かいあう2つの不思議な家に出会う。出入り口のない家は地中に半分埋まっているが、夜になると部屋の明かりが灯り、安心感と不安感を同居させる。

photo: YAMAMOTO Tadasu

淺井 裕介(1981- 東京)

《植物になった白線@ACAC》

クイックシート、2012年
(2012年淺井裕介展)

道路の横断歩道や「止まれ」の印などに用いられるのと同様の白線素材(クイックシート)を用いた作品。シート状になった白線素材をその場所を利用する人々と一緒に植物のかたちに切り出し、そのパーツを淺井が路上などに丁寧に並べて構成し、最後にバーナーで焼き付けて完成させた。