OPEN CALL: CALL for OPEN

国際芸術センター青森(ACAC)は2021年12月に開館20周年を迎えます。2020年度の公募によるアーティスト・イン・レジデンスプログラムでは、ACACに滞在もしくは、各地からこの場所にアプローチする表現者たちに、特徴的な環境を最大限活かしてもらえるようプログラムの設計を試みました。
ACACに滞在する神村恵、阪中隆文、野原万里絵はそれぞれ異なる滞在期間でワークショップや協働制作を行い、神村は公演で、阪中と野原は展覧会で作品を発表します。一方、新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限のため、海外を拠点に活動するアーティスト5名は、遠隔地から本プログラムに参加します。表現者同士の交流・市民との交流・創作活動やその発表自体を遠隔やオンラインで実施するのは初の試みです。移動が容易にできないからこそ生まれるコミュニケーションや、創作活動について発見もあるかもしれません。制作やリサーチをオンラインでいかに実施するか、また地域に住む方々とどのように交流していけるか、どのように作品を公開するか、話し合いを重ねながら進めています。
滞在する表現者も遠隔で参加する表現者も、様々な時期かつ同時進行で交流、創作活動や発表を行い、このプログラムを通して8名の表現者の試みが重なります。私たち主催者は、日々起こるそれぞれの動きが、ACACの場でダイナミックな連関を生み出していく様子を発信していきます。オンライン/オフラインで、印刷メディアも通して、この状況を表現者たちと共に楽しみ、創造的活動に関わっていただけたらと考えています。

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artists

神村恵(かみむら・めぐみ)

振付家・ダンサー
2004年より自身の作品の振付・上演を開始し、国内外で公演を行う。身体を物質、言語や他者との関係など様々な側面から観察し、再構築する作品を制作する。ソロでの活動に加え、2011年より高嶋晋一と「前後」、2016年より津田道子と「乳歯」を始動。「ダンス作戦会議」運営メンバーも2018年より務める。近年の主な作品に、2019年「Strange Green Powder」(フェスティバル/トーキョー19、東京)、2020年 乳歯「スクリーン・ベイビー#2」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京)など。

青森では《彼女は30分前にはここにいた。》(2019年)を発展させ、ソロのダンス作品の制作と公演、ワークショップの開催、ワークインプログレスの公開を実施予定。

ポートレイト撮影:金川晋吾


《彼女は30分前にはここにいた。》2019
撮影:blanClass

阪中隆文(さかなか・たかふみ)

1989年東京生まれ。多摩美術大学造形表現学部映像演劇学科卒業。暗渠、ビルの天井裏、床下、古墳、空き地など都市や建築の周縁的領域に着目し、写真・映像・インスタレーションを制作する。遊びのような行為によって、社会の変化のなかで生まれる空白の空間を個々の身体や感情とコラージュのように結びつける。近年の主な展覧会に、2019年 個展「スーパープレイ」(Token Art Center、東京)、2019年「引込線/放射線」(第19北斗ビル、埼玉)など。

今回の滞在では、「かゆみ」とそれにまつわる無意識の身体の動きに注目し、協働的な作品の制作と展覧会での発表のほか、全体主義、農業における労働についてのリサーチを予定している。


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写真、2013

野原万里絵(のはら・まりえ)

1987年大阪生まれ。2013年京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了。絵画を描く際の感覚的かつ曖昧な制作過程に関心を持ち、自ら制作した定規や型紙などの道具を用いた絵画作品を制作・発表している。また、ワークショップや協働制作も実施し、他者とのコミュニケーションを通して、絵画の新たな可能性を模索している。主な展覧会に、2020年「整頓された混乱」(gallery TOWED、東京)、2019 年「飛鳥アートヴィレッジ2019 回遊」/(奈良県立万葉文化館 展望ロビー、奈良)など。

本滞在では自身のドローイングと石の文様をモチーフとした作品を制作する。展覧会では制作過程も公開し、約240枚のパネルを組み合わせ幅9m×高さ3mほどの作品に仕上げていく。滞在前半には協働制作も行う。

ポートレイト撮影:増田好郎


《埋没する形象》
アクリル、メディウム、ジェッソ、キャンバス、パネル
468.2×134.9cm×25mm
2020
撮影:増田好郎

Amélie BOUVIER(アメリ・ブビエ)

1982年フランス生まれ、ベルギー、ブリュッセル在住。天文学の領域における歴史研究や、文化的記憶と集団的遺産に関する問いに基づいて実践を行う。科学的図像は、本質を覆い隠す構造を解明するための拡張した知識であると捉え、特に現在の社会政治的矛盾と知識の裂け目をさらす風景として、空と星に興味を持っている。ブビエの作品は歴史的事実、データ、視覚的素材に基づく一方、それらを図像と組み合わせて第三の可能性を提示する。近年の個展に2019年「Eight Minutes Ago」(Greylight Projects、ベルギー)他。

太陽系や人の記憶をモチーフとしたブビエの過去作を複数組み合わせ、 映像や布などを用いたインスタレーション作品を展示する。

アメリ・ブビエ展覧会「「私はいつも空の方を見ていた」

10月3日(土)-11月1日(日) 10:00-18:00 会期中無休 入場無料

会場:ギャラリーA

太陽系や人の記憶をモチーフとしたブビエの過去作を複数組み合わせ、 映像や布などを用いたインスタレーション作品を展示します。

 


Nature Variability, 2019
Installation view at the Former Royal Observatory of Belgium, Brussels,
curated by Marie Papazoglou.
10 prints on cotton fabric and sculpture, dimensions variable.
(Photo by Gilles Ribero. Credits: Amélie Bouvier and Harlan Levey Projects)

Alicja CZYCZEL(アリシア・チツェル)

1991年ポーランド生まれ。フランスとポーランドを拠点とする振付家・ダンスパフォーマー。2016年ワルシャワ大学、パリ・ソルボンヌ大学修了(人文学)。2019年National Choreographic Centre ICI-CCN(フランス、モンペリエ)修了(振付)。創作活動を通して、想像力、物に由来するパフォーマティビティや、集中の動作から作られる関係性をリサーチしている。スタジオや劇場を超え、環境的・文化的な周縁へと振付を拡張するべく、サイト・スペシフィックプロジェクトを展開する。

今回の制作では、青森の協力者とテキスト、サウンドや視覚的印象、痕跡や文書などを往復書簡のようにやりとりしながらリサーチを続け、新たな作品発表へと発展させる。

ポートレイト撮影:Filip_Madejski


Bouger le paysage, une balade du jeudi, 2019
撮影: Filip Madejski

Sara OUHADDOU(サラ・ウアドゥ)

1986年フランス、ドラギニャン生まれ。パリ装飾美術学校卒業。伝統的なモロッコの家庭で育ったことで2国の文化背景を持ち、モロッコの伝統的な芸術形式とコンテンポラリーアートの間で、忘れられた文化の継続性を新しい視点で位置付けることを試みる。人々との対話と歴史的事物の調査を基に制作を行い、学びや知識の交換が行われるプロジェクトや物語の形式で発表する。近年の展覧会に2020年「Global resistance」(ポンピドゥーセンター、フランス)他。

本プログラムでは、2年前に青森を訪れて以来関心を寄せていた、縄文土器やこぎん刺しの文様について調査を行い、モロッコの先住民ベルベル人の古い土器や織物に見られる文様と対比、考察する。展示形式での発表も行う予定。

Atlas (2) - History of systems of understanding
自然羊毛、化石入り大理石、リサニ

Jasmine TOGO-BRISBY(ジャスミン・トゴ・ブリスビー)

ウェリントン(ニュージーランド)を拠点に活動。マッセ―大学(ニュージーランド)およびグリフィス大学(オーストラリア)卒業。オーストラリア南海に浮かぶ島の第4世代であり、曽曽祖父母は幼少時にバヌアツから移住させられ、オーストラリアのサトウキビ農園で働いた。太平洋の奴隷貿易「ブラックバーディング」の歴史的慣習と、その現代への影響を調べ、作品として発表している。

トゴ・ブリスビーは、新型コロナウイルス感染症が収束してから来日し、ACACのアーティスト・イン・レジデンスプログラムに参加する予定です。

Uliyana PODKORYTOVA(ウリヤナ・ポドコリトヴァ)

1984年ロシア連邦モスクワ生まれ、The Rodchenko Art School(モスクワ)を卒業。 内なる・個人的な神話、疑似伝承に関わる、グローバリゼーションにおけるアイデンティティの喪失について問うべく、ビデオ、音声パフォーマンス、絵画作品を制作する。 近年の個展に「Ray’ok」(マルチメディア美術館、モスクワ、2020年)他。

本プログラムでは、青森の人たちへのインタビューを通じて、現代の民間伝承についてリサーチを深め、映像作品の制作を予定しています。また、伝統的な祭りと青森/日本 の彫刻の方法を学び、多岐にわたる創作活動を発展させていきます。実際の滞在は、新型コロナウイルス感染症が収束してからとなります。

ポートレイト撮影:Anna Petrova


《The wig do》1チャンネルビデオ、3分00秒、2018年


《Let's be what could not be!》
写真、2020年
雑誌「Dialogue of arts」のためのPavel Smirnoffとのコラボレーション

海外AIRエクスチェンジ・プログラム2020 佐藤朋子(さとう・ともこ)

国際芸術センター青森(ACAC)は2016年より、文化庁「アーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業」の助成を受け、海外のアーティスト・イン・レジデンス(AIR、以下AIRと記載)実施団体とエクスチェンジ・プログラムを実施してきました。同プログラムでは、個人および団体間のネットワーク構築を目的として、海外AIR団体からアーティストやキュレーターを受け入れ、ACACから毎年一名の日本人アーティストを派遣しています。
2020年度はロシアのZARYA Center for Contemporary Art(以下ZARYA CCAと記載)と連携してエクスチェンジ・プログラムを実施します。この度は、ZARYA CCAがアジアのAIR実施団体と開催する交換リサーチプログラム「Contact Zones: Far East 2020」に参加する表現者を派遣します。なお、参加者はアゾブ海・黒海に面したタマン半島に位置するZARYA CCAが設立したGolubitskoe Art Foundationに滞在します。

参加作家
佐藤朋子(さとう・ともこ)
アーティスト
1990年⻑野県⽣まれ。東京藝術⼤学⼤学院映像研究科メディア映像専攻修了。レクチャーパフォーマンスを主として「語り」による表現活動を行う。主な作品に、2018年《The Reversed Song, A Lecture on "Shiro-Kitsune (The White Fox)"》、《瓦礫と塔》、《103系統のケンタウロス》(個展:Gallery Saitou Fine arts、神奈川)、2019年《ふたりの円谷》、《Museum》(個展:「MINE EXPOSURE」BIYONG POINT、秋田)など。 2019年にはアーカスプロジェクトより、イギリス・スコットランドのホスピタルフィールドに派遣。
www.tomokosato.org
ロシアでは、パルテノン神殿をテーマとしたレクチャーパフォーマンスを発展させるためのリサーチと、ワークインプログレス公演を行う予定。2019年より“パルテノン”を通して、日本、アテネ、エジンバラの都市化について調査しているが、今回ロシア・クラスノダール地方の古代ギリシャ遺跡のリサーチが加わることによって、世界における洋の東西について捉え直し、作品を複眼的に深化させることが期待される。

Museum 《Museum》Lecture-performance, Video Installation, 2019
Photo: Kaya Tei

主催:青森公立大学国際芸術センター青森
協力:AIRS(アーティスト・イン・レジデンス・サポーターズ)、青森公立大学芸術サークル 、TAUTAI Contemporary Pacific Arts Trust、ZARYA Center for Contemporary Art
助成:令和2年度アーティスト・イン・レジデンス活動支援を通じた国際文化交流促進事業
後援:東奥日報社、陸奥新報社、NHK青森放送局、RAB青森放送、青森テレビ、青森ケーブルテレビ、エフエム青森