(災害ユートピア)
(SAIGAI Utopia)

ドローイング:本山ゆかり、デザイン:本庄浩剛
Drawing: MOTOYAMA Yukari, Design: HONJO Hirotaka
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国際芸術センター青森(ACAC)は現在施設の改修工事を行っており、展覧会などに使われる展示棟は2026年3月まで休館しています。こうした普段通りに施設を使えないタイミングだからこそ、ACACのスタッフだけでなく市民や学生、ゲストと互いに知恵や意見を出し合い考えることができるプログラムをACACと青森市街の両方で展開します。

作家でアクティビストのレベッカ・ソルニットは自著『災害ユートピア』で、有事に発生する共同体について主に北米で起こった事例を対象に取材・研究しまとめました。災害はまず悲痛なもので人や環境に忘れ難い傷跡を残します。本書ではそうした状況において、助け合いの即席コミュニティが生まれたことが記録されています。プロジェクト名を(災害ユートピア)としたのは、この本で書かれていることをそのままなぞるのではなく、わたしたちそれぞれにとってどのようなコミュニティのあり方が可能かを考えることが大切だと思っているためです。

日本でも東日本大震災や昨年の能登半島地震、各地で頻発する水害や今冬の豪雪など、わたしたちの日常がいつどこで災害と接続するかわかりません。ACACで一泊二日を過ごす「ACACベースキャンプ」、青森の街中にできた新しい防災拠点でもあるカクヒログループスーパーアリーナで行う「テント映画祭」では、わたしたちはどのように他者と共に生き延びられるのかをそれぞれが考えることができる場となることを目指します。

青森公立大学 国際芸術センター青森[ACAC]

ステートメント

“つまり、大災害は、それ自体は不幸なものだが、時にはパラダイスに戻るドアにもなりうるのだ。少なくともそこでは、わたしたちは自分がなりたい自分になり、取りたい行動を取り、それぞれが兄弟姉妹の番人になる。”
レベッカ・ソルニット『災害ユートピア』

2017、18年に「都市防災ブートキャンプ」なるイベントを開催した。避難訓練と映画とアーバンキャンプをブリッジする試み。会場はハイパーレスキューの訓練施設のある京浜島。誰もが病人になり得るように、誰もが被災者になり得る。厳しい現実と新鮮な体験、見知らぬ他人と多くの感情を行き来する様は映画館や美術館と似ているが、身体に刻まれる記憶は全く異なるものであった。

さて今回はACACを舞台に被災した想定で一泊の“場”のイベントを、防災拠点でもある青森市総合体育館で半日の映画祭を開催する。アートスペースや公園、体育館は様々な人が訪れる。避難所もそうだ。プロや専門家だけではない。スキルや知識のない人もいればコミュニティにいまだカウントされていない人もいることだろう。いつでもどこでもバラバラだ。故、正しい避難所、正しい被災者は存在しない。

同時に起こった衝撃に際し、居合わせた皆の立場や経験や出自は度外視される。背負ったロールやキャラという過去から、それぞれの立場に立脚した未来から外れた今/ここをなんとか生き抜くために。それがいっときのユートピアを生み出すこともあるとレベッカは指摘する。

作家や観客、企画者が一夜を過ごし、過去と未来の圏外空間を空想しつつ各自D.I.Y.やHACKの精神を発揮できるか否か。避難訓練は防災意識の再確認と記憶の継承として重要な機会であるだろう。加えて、アートセンターという門外漢のアプローチとして、有事の利他的(かつボランタリーな)行為やクリエイティブが発露するかどうか、アーティストの発想や頓智と異なるとすれば何なのか、見届けてみたいと考えている。当日は薄い台本はあれどほとんどアドリブである。いろんな感情を抱いて仮眠をとった後は総合体育館まで14km歩く。歩く。

翌週は、その体育館で「災害ユートピア」の空想を広く一般に開いてみる。過去100有余年に及ぶ日本の災害と、避難と、復興の兆しを映像記録やドキュメンタリー映画から学ぶ。種種雑多な参加者の皆さんと共に、過去から学ぶ”備え”と咄嗟コミュニティ形成への”構え”が出来得るのか、まぁやってみましょうよ!

澤隆志(共同企画)

(災害ユートピア)
ACACベースキャンプ
集合:展示棟ラウンジ
日時:2025年9月20日(土)、21日(日)
定員:10名
申込:https://forms.gle/e2C6hRhTTTyyL9Ru6
※定員を超えた場合は抽選となります。
※申し込み締め切りは8月24日(日)までです。抽選結果は8月中にお知らせします。
※後日参加者同士で共有する1000字程度のレポートを提出いただきます。

テント映画祭
場所:カクヒログループスーパーアリーナ
日時:2025年9月27(土)12:00-21:30 ※入場無料、一部イベント要予約

  • 澤 隆志
    SAWA Takashi

    2000年から2010年までイメージフォーラム・フェスティバルのディレクター。現在はフリーランスのキュレーター。あいちトリエンナーレ2013、青森県立美術館、長野県立美術館などと協働キュレーション多数。「都市防災ブートキャンプ」(2017,18)「めぐりあいJAXA」(2017-)「たまき」(2023)「スゥパァドゥルォォォォオ」(2024)「生活者としての被爆」(2025)など企画/プロデュース。

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  • 相澤 久美
    AIZAWA Kumi

    建築家・編集者・映画プロデューサー・コンサルタント。建築設計事務所を軸に雑誌・書籍・新聞の編集、映画プロデュース、地域のアートプロジェクト、災害支援・中間支援など、チームで取組むものづくりに携わる。NPO法人みちのくトレイルクラブを立ち上げ現在常務理事兼事務局長。silent voice、RQ災害教育センター、自然公園財団、マザー・アーキテクチュア等の理事を兼務。

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  • とちぎ あきら
    TOCHIGI Akira

    フィルムアーキビスト。『月刊イメージフォーラム』編集長などを経て、2003年より東京国立近代美術館フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ[NFAJ])研究員として、映画の収集・保存・復元・アクセス対応に従事。退職後は、NFAJの配信サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」や「フィルムは記録する」の制作に関わるとともに、(一社)日本映像アーキビスト協会の会長を務めている。

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Aomori Contemporary Art Centre (ACAC) carried out renovations to its buildings during fiscal year 2025. This meant that the Exhibition Hall, used for exhibitions and other functions, would be closed for a full year, until March 2026. Since we could not use ACAC’s facilities as usual during this period, we developed a programme to be held both at ACAC and in downtown Aomori City, a programme which would allow for its own contours to be defined and determined not only through the input of the ACAC staff, but also through the mutual exchange of knowledge and opinions with local citizens and students, as well as artists and other guests of the centre.

In A Paradise Built in Hell (Japanese title: Saigai Yutopia [Disaster Utopia]), author and activist Rebecca SOLNIT collects findings from interviews and research on communities that form in times of emergency, focusing primarily on case studies from North America. Disasters are first and foremost terrible events which leave lasting scars on both people and the environment. Solnit’s book documents how impromptu communities based on mutual aid arise in such circumstances. We chose ‘(SAIGAI Utopia)’ as the title of this year’s programme, but not to simply mimic the book; rather, the added parentheses signify our belief in the importance of each of us thinking for ourselves about what kinds of communities we consider to be possible.

In Japan, too, we do not know when or where our ordinary lives will suddenly become connected to disaster, as demonstrated by the Great East Japan Earthquake, the 2024 Noto Peninsula Earthquake, and the frequent flooding and heavy snows in various parts of the country. Under the framework of our Invitation-based AIR programme, we invited curator SAWA Takashi to conduct the projects ACAC as a Base Camp and Film Festival as a Tent in conjunction with ‘(SAIGAI Utopia)’. The goal of these projects was to create spaces which would compel each individual to consider ways of living and working together with other people in order to survive.

Aomori Contemporary Art Centre, Aomori Public University

(SAIGAI Utopia)
ACAC as a Base Camp
Meeting Point: Exhibition Hall Lounge
Dates: Sep. 20 (Sat), 21 (Sun), 2025
Capacity: 10 participants
Registration: https://forms.gle/e2C6hRhTTTyyL9Ru6
*If the number of applications exceeds capacity, participants will be selected by lottery.
*Application deadline: Aug. 17(Sun). Lottery results will be announced within August.

Film Festival as a Tent
Venue: Kakuhiro Group Super Arena
Date & Time: Sep 27(Sat) 2025, 12:00–21:30
*Free admission. Advance reservation required for certain programs.
*The screening program will be conducted in Japanese only.
*Participants will be asked to submit a report of approximately 1,000 characters to be shared among all participants at a later date.

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