2003年 秋のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラム
「ヴァナキュラー・スピリット」
 

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参加アーティストと作品

 新井厚子(ARAI Atsuko)
 1959年京都府生まれ、スペイン在住。それぞれの人の個人的な記憶や思い出に基づいた町の名所作りをしながら、 内面的な視点から作られる町の現実と知覚されるものとの関連を探る作品を制作。

<展示作品>
・「めいしょPROJECT」 (写真、ポスター、地図などによるインスタレーション)インタラクティブ・「めいしょ」巡りツアー
 一般に名所とは、歴史的に由緒ある場所や風光明媚な場所など、「公(おおやけ)」に認められた場所のことを指す。 しかし新井が計画する名所一めいしょ‐とは、それとは違ったごく個人的な視点から見て重要な、あるいは意味深い場所のことである。 新井にとって町とは、人々がそれぞれの場所に持つ思いの集積である。このプロジェクトは、 青森という町に暮らす一人ひとりにとって意味のある場所、その場所をめぐるそれぞれの物語、 そしてその人々との出会いによってこの土地を知覚する試みである。本展では会場に展示されている作品だけではなく、 来場者との対話や、教えてもらった場所を実際に新井が歩くことによって成立し、 それ自体がこのプロジェクトの大きな柱となっている。



 富田俊明(TOMITA Toshiaki)
 1971年神奈川県生まれ。さまざまな人々・土地・歴史と直に関わりながら、個と個、 コミュニティの関係を揺さぶり、人間が本来もつ共感の力を実現させることによって新しいコミュニケーションを生み出す。
 
<展示作品>
・「虹と風」(ビデオ、木の実、虫の屍骸、ドローイング)
 夢や幻想はまったく個人的なものなのだけど、深いどこかでつながっているのかもしれない。いろいろな人が同じ虹を違う場所で見るように、渡っていく風が、さまざまな匂いを残していくように、記憶はそれぞれはばらばらなのに、いつか聴いた話が重なっていく。色々な線が漆み合い虹のような輪ができるように。東北の風に吹かれる旅の途上で、虹と風をめぐるヴィジョンの意味を追う富田は、青森の自然の中から拾ったものや物語から新しい世界を編み出す。



 出月秀明(IDETSUKI Hideaki)
 1973年東京都生まれ。人を取り巻く環境の中の風や光、空気の匂いなどを通して五感を刺戟することによって、新たな「向こう側」の世界への開口を作る。
<展示作品>
・「最後の土地」(映像、写真)
 展示している映像は、出月が青森県大間町で自らカメラに収めたマグロ漁の映像であるが、大画面で映し出されるその映像の大部分は激しく揺れる海の映像である。したがって「その瞬間」を見ることができる人は、マグロの捕獲と同様に、根気よく待ち続けた人か、運のいい人であろう。出月が作品において追及しているものは、自分を越えるきっかけとなる入口、あるいは到達点であり、その過程が作品となるのである。それらを手に入れることは難しく、きっかけを見つけるためには何らかの「運」が左右する。出月は偶然にも撮影することができた「マグロ」をこれらの象徴として捉え、作品として展開した。



 イスクラ・ディミトロヴァ(Iskra DIMITROVA)
 1965年マケドニア生まれ。光と闇、物体と音響によって非日常的な空間を作り出し、鑑賞者を不思議の国へ誘い込む作品を制作。リアリティを創造するためにテクノロジーやさまざまなメディアを駆使する。

<展示作品>
・「こども会議」 (発光ダイオード、子どもの声)
 西欧世界、とりわけこの数年戦争に巻き込まれているバルカン地域の出身であるディミトロヴァは、絶望や残酷な現実、政治や皮肉やあてこすりといったイメージの中で育ってきた。彼女にとって東洋、とくに日本はその反対に静けさや誠実さで満たされたまったく新しい惑星のように感じられる。展覧会では、静けさ、穏やかさの中に人々が漂うような環境を作り出して、アートの力で、人の生活に詩的なイメージを復活させることを求める。蛍狩りや桜の花見のように、あるいは俳句や神話のように、象徴が息づく世界がそこに現われる。




 クリストフ・ルース(Christph LOOS)
 1959年ドイツ生まれ。見えるものと見えないものとの関係を探ることを主題にする。すべての形が形而上的要素をもつことを、写真や木を使ったオブジェで表現する。

<展示作品>
・「キアズマ(交叉関係)#7」 (木版一朴の木(木紙と木版)のインスタレーション)
・「キアズマ(交叉関係)#8」 (朴の木の木版一木紙と版木としてのシリンダー)

 クリストフ・ルースの木版画は、1本の丸太から生み出される。丸太の表面をかつら剥きにしたものを媒体とし、残った芯の部分に彫りを施したものを版木として摺るという独自の技法によって制作されるものである。さらにそれらは平面作品でありなおかつ立体作品とも捉えられ、媒体と版木の両方が、同時性を持ったインスタレーションとしてギャラリー内に展示されている。ルースにとって彼の木版は、永遠にもつれ合うものである。それは同調や構造的な同時性ではなく、「キアズマ(交叉関係)」を意味する。見えるものと見えざるもの、分化と統合、可逆性と非可逆性という互いの交叉が、版画とい
う客観的な一瞬の通過点から立ち現れてくるものなのである。




 ロレッタ・ヴィシーチ(Loreta VISIC)
 1976年クロアチア生まれ。くつろぎの雰囲気が破局に向かう状況を演出、和やかで親密なイメージを一見無心に用いながら、家庭生活や子ども時代、家族などののどかな話題を侵食する作品。親密さは疎外に、安全は恐怖に激変するオブジェやインスタレーション。  

<展示作品>
・「詩」 (電球、ポリエステル、音、森、秋、夜)
 青森の 暗く、寒く、寂しい夜に
 木々が葉を落とし、生命の循環が終わりを迎えるとき
 鳥が美しく歌を謳う
 森を温かさの記憶で満たしながら
 森を新しい生命の始まりの魂で満たしながら
 同調する死と生

 月は古くからのよき友人
 彼女の双子の姉妹とともに空に昇る
 彼女自身がそうであるように

鳥の声は日本の鳥とオランダの鳥によって演じられており、月は月によって演じられる
それは、円的な時間概念(日本)と線的な時間概念(オランダ)のこの地での出会いでもある

*バナキュラー・スピリットとは?
 バナキュラー・スピリット(土地の精神)とは、いうなれば、我々を取り巻く地・水・火・風・光・闇と いった自然環境、そしてその土地固有の見えざる力によって育まれる人間の精神です。今回のプログラムでは、 これらを元に作品制作を行い、また地域と積極的に関わる活動を行うアーティストを公募しました。


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