1月12日(日)ブラジル滞在報告会「それぞれのブラジル」
2020.1.13.月曜日
1月12日(日)は、船井美佐さんと鎌田友介さんによるブラジル滞在報告会「それぞれのブラジル」を開催しました。
これは、ACACが2017年から行っている日本人アーティストの海外への派遣事業で、ブラジルに滞在したお二人に、現地での活動の様子をお聞きすることを目的に開催しました。
お二人の滞在先はブラジル、サンパウロのアトリエ・フィダルガです。フィダルガは、2015年にACACの夏AIRに参加したサンドラ・シントさん、2017年の夏AIRに参加したアルバーノ・アフォンソさんが主宰する美術団体です。
船井さんは2019年2月末から3月に、鎌田さんは2017年12月に滞在しました。
報告会では、まずは船井さんからお話しをお伺いしました。
船井さんは元々日本美術を学んでおり、日本とは、日本画とは何なのかを考えながら制作をしています。 ブラジルには日系人の方多く、様々な国から移民が来ていて混血も進んでおり、ブラジル社会を知ることで日本のことも見えてくるのではという興味と、作品制作と並行して力を入れている美術教育の状況のリサーチという2つのテーマを持って滞在してきました。
ブラジルでは、現代アートの世界ではコンセプチュアルアートが中心だそうですが、ストリートアートも盛んだそうで、ストリートアートの世界でもニューヨークで活躍したり、グラフィティ専門のコマーシャルギャラリーがあったりと、アートの潮流が2分化しているそうです。
ブラジルでは構成主義の流れが現在も大きな影響を与えていること、また、第1次世界大戦の頃と1950-60年代にブラジル独自の芸術文化を作ろうという運動があり、幾何学的抽象表現や、身体性や空間性を重視した作品、社会や政治へ関与する作品や、多民族の文化を取り入れる作品も多いというのが特徴だそうです。
フィダルガで活動するアーティストの作品を中心に、ブラジルのアーティストの作品画像を見ながらご紹介いただきました。
後半は美術教育について、学校やカルチャーセンターを訪問した時の様子や、サンパウロビエンナーレで長くエデュケーションキュレーターを務めたアーティストのステラ・バルビエリの活動についてもご紹介いただきました。
鎌田さんは、2017年にACACで、国内外の日本式建築のリサーチを基にした作品を発表しており、その延長として、ブラジルの日系移民の方々が作った日本式建築のリサーチを行いました。
現在アメリカに滞在しているため、スカイプでのご参加です。
日本人のブラジルへの移民は1908年に開始され、112年が経過しています。最初期は、ジャングルの中で木を切り倒すところから開拓が始められ、とても簡素な造りの建築だったそうです。
まだこの最初期の建築も残っているそうです。
第2期、第3期と時代を経るにつれて作りも頑丈になってきて、文化遺産として保護されている建築物もあるそうです。
多くの建築物は、ジャングルの中にポツンとあるようで、リサーチに行くのも、ジャングルの中の車1台しか通れないような細い道を通って行ったそうです。
日本式建築は、工法は日本式でも、材料は日本と同じものは手に入らないので、ブラジルで手に入るものをアレンジして使っていたそうです。
試行錯誤する中で、最初に奴隷としてブラジルに来た人たちが日系移民の方に使いやすい材料を教えてあげたりしたこともあったそうです。
日系の方が多く住むリベルタージ日系移民資料館があり、そこでの調査や、日本式建築が多く残るレジストロという町でのリサーチも多かったそうです。
レジストロでは、日本式建築がどこにどのようなものがあるのかの詳細なマップも作られているそうで、写真で見せていただきました。
鎌田さんは来週からブラジルに渡り、レジストロに4か月滞在して更に日本式建築の調査を進め、将来的にはその調査を基に作品を制作するプランもあるようです。
鎌田さんも船井さんも、ブラジルで見てきたことが今後どのように作品になるのか、楽しみです。
お二人のレポートも以下のリンクでご覧になれます。
http://www.acac-aomori.jp/category/acacblog/%e6%b5%b7%e5%a4%96%e6%b4%be%e9%81%a3%e4%ba%8b%e6%a5%ad/