海外派遣事業―鈴木基真さんのブラジルレポート:美術紀行2週目

2020.3.11.水曜日

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前回チラッと紹介したブラジルの詩の文化を紹介したカタログをサンドラから借りました。
文字組やそこから派生するイメージなど面白いですが、ポルトガル語ならではの文化なので理解は少し難しいです。

3月4日:

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サンパウロ市内の見るべきエリアをなんとなく3つに分けて、この日は右下の赤丸のところに行ってみることにしました。そこはイビラプエラという大きな公園が有り、その中にいくつか美術館ん博物館があるのでまとめてみられる場所です。
1箇所目:Museu de Arte Contemporânea

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直訳すると現代美術館。
外観はうまく撮れず、、、。
なんだか病院みたいな作りの美術館でした。入場無料。空いてました。景観の良い屋上にはバーがあったりしてオープニングパーティーに使うのでしょうか。

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こちらがやっていた展示。
ほとんど準備中でしたが笑、近代~現代にかけてのコレクションを見ることができました。
それと、運営元が大学なのか、繰り返し同じ大学名が出てきます。USP

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作品かと思ってみてみたら、雨漏り?を受け止める為に置いたただの石の板でした。

サンドラ、アルバーノ、フィダルガに出入りしているding musaの作品もきっちりコレクションされてました。

展示をしていたHenrique oliveira という70年代生まれのアーティストは共通の知り合いがいたので後日スタジオ訪問をできることになりました。
彼の作品が展示されていたのは、ロビーのような踊り場のような場所でしたが、この建物、この様な踊り場みたいな空白の場所が沢山あり、これからもコレクションしてくよーという雰囲気がプンプンした。
トイレ前とかにラウシェンバーグの作品が有ったりする。

2箇所目:Fundação Bienal de São Paulo

この施設は様々な機関が入った複合施設です。ブラジル人アーティストを世界に出すための支援や実験の場として開放されています。展示予定を少し見たら、概ねパフォーマンス寄りのアーティストでした。
この日はximena garrido leccaというアーティストの展示でした。
ここは有名建築家のオスカーニーマイヤーが手掛けたものですが、それらしき場所は何かの準備中で入れず、、、。

3箇所目:MAM-Museu De Arte Moderna
直訳すると近代美術館です。残念ながら展示替え中で入れず!

4箇所目:Oca

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こちらもオスカーニーマイヤー作。何に使うかは不明。補修中でしたが入れました。
先住民の家を模した形になっています。

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こちらはocaの隣の劇場同じくオスカーニーマイヤー作
この人の建築は市内に多く見られます。作りとしてはかなりざっくりしていて使う人のアイデアが試される感じです。
5箇所目:Museu Afro Brasil

奴隷としてアフリカ大陸から連れてこられた人々の文化を展示した博物館です。いやーここすごい、、、。
展示物が乱雑に所狭しと置かれている、、、。展示されているというより置かれている、、、。トイレ前ギリギリまで物がある。秘宝館みたいな雰囲気すらある。その中に唐突に現代作家の作品が展示されていたりする(勿論アフロアメリカン系)
アフロアメリカンの文化ほど自分の感覚から離れたものはないのではないかと感じました。ほとんど考えていることが分からない、、、。サンパウロでもこの感覚を目にすることがあまりないので、独自路線をどこしらで展開しているのかもしれません。面白かったです。一番時間かけて観ました。

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ここでこの日は終了。公園内池にて小休止。その後帰宅。

3月6日:
前日歩きすぎて疲れたので1日休み、明けてこの日は滞在先に一番近いギャラリー街巡りをしました。
全て徒歩圏内!
1軒目:GALERIA MILLAN

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サンドラの所属するギャラリーです。でけー笑

この日はCriaturas Ornamentaisというペインターの展示。絵具もりもりです。空間に充満するオイルの匂い。どこでも同じ匂いでなんだか安心します。ドローイングは意外と繊細。

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ちなみに隣にはアネックス的なさらに大きいスペースが笑
残念ながら準備中。

2軒目:GALERIE BRESIL

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こちらは若手ギャラリー。日本にもありそうなサイズ感。
なぜかしまってました。昼休み中かな?

3軒目:FORTES D’ALOIA&GABRIEL

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こちらも最大手の一つ。そしてこのファサード、、、。

展示はLucia Lagunaというペインター。MASPにも作品がありました。
4軒目:GALERIA RAQUEL ARNAUD

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ここは老舗感があります。

richard serra, carlos cruz-diez、yves kleinの作品など。

別の階にも作品がゴロゴロ。どうやらコレクション展の様でした。

こちらのギャラリーは中庭があるところが多いです。そこでパーティーしたり、大きな彫刻を展示しています。
いいなあ

5軒目:BOLSA DE ARTE

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ここもとても良い空間でした。この近辺では一番好きかも。(唯一受付の女性が英語を話せたというのもある

Fabio Cardosoというペインターの展示。こっちも絵具盛ってますね。
すごく若々しい風景画に感じましたが、確か50年代生まれくらいのアーティストでした。
この日はこれでおしまいです。

3月7日:
この日はサンドラのインストールの進捗状況を確認しつつランチをしてきました。
サンドラの準備が整うまでおすすめのアーティストの図録を貸してもらいました。

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この2名。特に右の人は身体感覚と形が結びついていてビシビシ感じる物があります。

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こんな感じ。

さてITAUへ。

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アルバーノも参戦中

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本人も公言している北斎のイメージが全面に。ちなみに写っていませんが、北斎のオリジナルプリントも持ち込まれていました。

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フォントが可愛い

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円形の壁の中。アルバーノがドローイングを肩代わり。

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外ではアシスタントのウイリアムがドローイングを肩代わり。
この肩代わりシステムいいなあ。こっちのアーティストはみんな柔軟なんですよね。インストーラーもみんなアーティストだし、このITAUの事務局のスタッフもみんなアーティスト。
ちなみに私もちょっと記念に手伝ってきました。
あまり長居をしても邪魔になってしまうのでサンドラに教えてもらったロケーションを巡りつつ帰路につきます。

1、

ITAUの別フロアでは歴史建築展もやっていました。ブラジルは建築も活発の様です。日本では法律に触れそうなものばかりな気もしますが笑

2、

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教えてもらった公園内。原初の森が維持されているそう。ブラジルのアーティストはこの自然から造形感覚の影響を受けている人も多そう。
3、

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こちらはIMSというフィルム映画と写真専門の美術館。

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映画は好きですが言語の壁が大きすぎて難解でした。物語を読み込むメディアの宿命でもあるのかなと感じました。
この日はこれでおしまいです。

感想:
ブラジルの美術館はどこも導線がややこしい。ややこしいというか設定がされてない感じ。どこから入ってもいいし、どこから出てもいい様な。故にセキュリティー面は低い感じは否めないが、作品を探す楽しさがある。あと照明はどこも暗め。日本の展示空間が明るすぎるともいえる。バリアフリー化は日本より遥かに進歩している。
敢えてブラジル人作家を生まれた年代別に作品の雰囲気を見てみると、やはり欧米の美術の影響が如実に感じる。もともとヨーロッパとの結びつきは強いと思われるので、日本より更にストレートに取り入れられている印象を受ける。
60年代生まれは絵画に対するシュミレーションがよく見られるし、70年代生まれのアーティストは写真というメディアを主軸に置く感覚があるし、80年代生まれはメディア論を飛び越え、より身近で効率的な表現に行きついている。これは日本と共通する感覚と言ってもいいかもしれない。(というか世界中)
勿論時代に関係なく好き勝手にやっているアーティストもいる。これは世界どの地域でも同じだろう。
また個別によく観察すれば、ある部分ではブラジル土着の感覚はあるが、それが世界へ出たときにどの様に受け入れられるのかは気になるところ。大雑把にラテンアメリカの美術として括られてしまうのだろうか。
ここブラジルの様に美術の歴史をまとめてみることができると、昨今語られることの多い政治的、社会的な作品群も、美術の歴史の中では昔から一部に普通に存在した表現であり、これもまたある種の流行りなのかなとも思えてくる。
そう考えるとかれこれ50年近く新しい表現が生まれていないとも考えることができる。これからどのような発展を美術が果たすことができるかは、ローカル/グローバルとは何かを今一度考えるのが得策かもしれない。
アーティスト個人としてどう活動するかのヒントは、スケール感を持つこと。
これは作品サイズが大きいということではなくて、彫刻でも絵画でも建築でもデザインでもなんでもやること。
それが自分にとって正当性があるのであれば躊躇せず拡張していくということ。
そういったことをブラジルのアーティストたちを見ていると感じる。そしてそれぞれの活動を揶揄せずコミニティーを大切にすること。お互いに興味を持ち称賛しあっているのが素晴らしい。
学問としてより教養としてアートが成り立っているからだと思う。
日本でこれが出来れば窮屈さは感じなくなるだろう。
あと、やっぱり私、風景画が好きなんだなと実感しました。それには拘っていこうかなと考えております。

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