鎌田友介レクチャー「別の建築史」
2016.11.11.金曜日
10月30日(日)は鎌田友介さんのレクチャー「別の建築史」を開催しました。
鎌田さんがACACで発表している作品は、ごく一般的な二階建て木造日本家屋がモチーフとなっています。
ただし、これは戦時中の日本統治時代の台湾や韓国で建設されたり、アメリカで焼夷弾実験のために建てられたりしてきた歴史があります。
鎌田さんはこの夏頃からこれらの各地で建設されてきた日本家屋のリサーチを続けているそうです。
今回のトークでは、大学在学中の作品の紹介を始まりに、現在手掛けている日本家屋のリサーチについてのお話しをうかがいました。
鎌田さんが生まれた土地である新潟での体験から、新潟で創業した日本で初めての石油会社とアメリカの石油会社の関係、その石油会社と建築家アントニン・レーモンドの関係、そして石油会社とレーモンドとアメリカの焼夷弾実験の関係、
それに並行する木造軸組構法の日本式建築と西洋近代建築がいかに結ばれ文脈が作られてきたのかというお話は、様々な登場人物・出来事・建築物が絡み合う推理小説を読み進めるようでもあり、日本という国がいかに(西洋を中心とする)世界の中に自らを位置付けようとしてきたのかが垣間見え、翻って現代の様々な文化政策をめぐる状況にも考えを馳せるような余韻が残りました。
それらの歴史的に行われてきた文脈の作られ方を踏まえて、鎌田さんの制作の背景として、ある一つの視点が強要されることや、イメージの接続による文脈の作られ方への疑問があり、そうではない複層的な視点によるイメージを作り出すことへの興味が背景にあるということを語られていました。
今回の作品のモチーフである木造日本家屋は今後もリサーチが続けられる予定で、作品がこれからどう変化していくのかも楽しみです。