冬の芸術講座2019 版画ワークショップ「アクアチントによる濃淡と階調の美しさ」

2019.3.26.火曜日

3月初めは、版画のワークショップ「アクアチントによる濃淡と階調の美しさ」を行いました。

講師は、腐食銅版画の技法で繊細な線や形を表現する漆戸美枝子さんと、アルミ板を使ったドライポイントを制作し国内外で作品を発表している橋本尚恣さんです。

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2日間の講座のうち、1日目は銅板の腐食を行いました。
まずは漆戸さんと橋本さんから制作方法について、腐蝕銅版画の線と面の表現にはそれぞれ異なる技法を使うという説明がありました。

ニードルなどで描かれた線を用いるエッチングという技法と、散布した松ヤニを使って面を表現するアクアチントという技法を説明してくれました。
線と面、腐蝕させない部分にグランドという防腐剤を塗布することと、腐蝕液につけることを繰り返すことで、線の強弱や面の色のグラデーションを作っていきます。
腐蝕液につけて腐蝕させる時間を長くするほど深く腐刻されるため、刷った時に線は強く、面の色は濃く表すことができます。 

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参加者の方々には、架空のカレンダーをテーマにした下絵の準備を予めお願いしてありました。
カレンダーには季節を表す絵や数字、月や曜日を示す文字が含まれます。思い入れのある季節や自分の誕生月をもとにするなど、数字や文字を合わせた自由な発想の絵を描いてきていただきました。

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エッチングでは、銅板の表面にグランドと呼ばれる防触液を塗って乾かし、下絵を転写し、ニードルで転写した下絵を線描していきます。

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ニードルでグランドを剥がすように線描をし終えたら、腐蝕液に浸けます。
さらに、線を強くする部分を残し、段階的なグランドの塗布と腐蝕を繰り返すことで線の強弱を出します。

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アクアチントでは、松ヤニの粉を箱の中で巻き上げて銅板の上に均等に散布したあと、熱して粉を定着させ、エッチングと同じようにグランドの塗布と腐蝕で濃淡を調整しグラデーションを作っていきます。

今回は、エッチングで10分単位、アクアチントは20秒単位で腐蝕液につけてみました。

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長丁場の制作の合間には、スタッフによる特設カフェコーナーが憩いの場となりました。

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二日目は刷りの工程です。
プレートマークを整えたら、インクが固くならないように電気ウォーマーの上に版を置いてインクを詰めていきます。
充分に詰めたら寒冷紗で拭き取り、水で湿らせておいた紙を置いて刷っていきます。

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創作棟のまん中にある銅版画スタジオには、日本一大きいと言われる大型プレス機があります。このプロ仕様のプレス機を使うには、紙の準備からプレス機の圧の調整、刷りの具合など、専門的な技術が必須となります。
今回は、プレス機の設置当初の銅版画研修会にも携わったことのある橋本さんの指導のもと、このプレス機を使って刷ることができました。

各々の版から架空の年月を表すような一枚の版画、カレンダーにすることができないかという試みです。
まずはどう並べるか、紙と同じ大きさのビニールの上にレイアウトを決めて印をつけていきました。

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シートをプレス機のベッドプレートの上に敷いてそれぞれでインク詰めをした版を並べました。

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数人がかりで紙とフェルトを順にゆっくりと置いていき、フェルトの状態を見ながら、電動ローラーを動かしていきます。
インクの状態や版の並びを変え、約2m幅の版画を2枚刷りました。

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最後は作品を見ながら講評会。
難しいテーマでしたが、それぞれの捉え方によって個性が大きく表れたように思われました。腐蝕と刷りという初めての技法で思い通りにいかなくとも、偶然のイメージの面白さを見つけられた参加者もいました。

線描、松ヤニの定着、腐蝕、インク詰め、拭き取り、紙、刷り。
多くの工程にある要素によって、異なる画が作れる魅力と奥深さを体験することができたのではないでしょうか。

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2日間なかなかハードでしたが、講座終了後も刷りを続ける参加者もいました。
楽しみながらも制作に集中することができたようです!
最後まで丁寧にご指導いただいた講師お二人に感謝です。

大型プレス機で刷った版画は、創作棟の銅版画スタジオ横の廊下に展示します。
窓越しからでもご覧いただけます。

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