ふるさかはるか「山の報告会」
2017.6.21.水曜日
青森市所蔵作品+ふるさかはるか展覧会「土のことづて」最終日の6月18日(日)はふるさかはるかさんのトーク「山の報告会」を開催しました。
このトークでは、青森市所蔵作品と組み合わせるという展覧会についてどう考えてアプローチしたかということ、出品作である「トナカイ山のドゥオッジ」の制作の過程とその背景である北欧の先住民族サーミの人や暮らしについてのこと、そして3月から継続的に行っている青森でのリサーチのこと、という3つのトピックについてお話しいただきました。
展覧会については「土のことづて」というタイトルについての考察をお話いただきました。
土とは、土着の、土地のという意味で青森の土、サーミの土と捉えることができるのに加えて、植物や動物、人間などの循環の場でもあり、ふるさかさんの作品の要素の一つでもあります。
そしてことづてとは、人から人へ口伝えで伝わってきたものであり、動いて旅をしているような存在であるとすると、動いているうちに淘汰され必要なものが残っていると考えられます。
青森市が所蔵している民俗資料は人々がごく普通に生活の中で使ってきた日用品であり、用途を終えたら捨てられるようなものなのに、今ここで台座の上に置かれて展示されています。それは、残っている・残されたという意味でことづてのようで、展示されている資料に言葉が残っているわけではありませんが、物から言葉が発せられているように考えられます。
また、サーミや青森でふるさかさんが出会った言葉は、展示やトークで引用することが、言葉のメモからことづてになる一歩を踏み出したところではないか、というお話がありました。
サーミについてのお話の中では、サーミがもともとトナカイと一緒に移動しながら生活する遊牧民であったために、トナカイが重要な資源だと考えられていることや、先住民であることから差別を受けていた歴史があり、民族運動から表現活動が派生してきたことなどにも触れられました。実際にトナカイと作業をしている様子や、サーミの人々が作る工芸品の写真もたくさん見せていただきました。
最後に青森でのリサーチのお話。
ふるさかさんはこれまで、津軽裂織、こぎん刺し、かご編み、津軽塗の職人さんや作家さん、小牧野遺跡の発掘や管理に携わっている研究者の方などにお話しを聞いてきました。
青森のリサーチについてはまだ話を聞き終えたばかりでこれから咀嚼するところと言いつつも、特に印象的だったという津軽塗の道具の話やそこで見た津軽塗のお椀についてお話しました。
「土のことづて」は展覧会、ワークショップ、リサーチ、記録集のすべてをひっくるめて一つのプロジェクトとして構成することを意識しました。作成はこれからですが、最終的に記録集がどんな形になるかまで、見守っていただけたら嬉しいです。