イラスト連載「こちら現場の米次郎です!」vol.10
2018.10.15.月曜日
ACACのテクニカルアシスタント米次郎が見た現場の様子をお伝えするイラスト連載「こちら現場の米次郎です!」、だいぶ遅くなってしまいましたが、今回は春に個展を開催した多田友充さんの様子をお伝えします。
多田展関連イベント 対談「水と水が交わるところ」
2018.6.16.土曜日
6月10日は、多田友充×森達也 対談「水と水が交わるところ」が行われました。
多田さんはこれまで森さんの本や映像を見てこられたそうですが、今回は森さんが持っているいくつかテーマのうち罪と罰について話が進められ、ノルウェーの刑事司法の話をしていただくことになりました。
ノルウェーは40年程前に刑罰の寛容化が行われ、今では再犯率が世界で最も低い国だそうです。森さんが過去に寛容化を進めたキーパーソンでもあるオスロ大学の犯罪学者と、その地で一番古くからある刑務所での受刑者へのインタビューをした時の話です。
刑務所内の受刑者が暮らす部屋では、テレビやキッチンなど、不自由のない一般的な暮らしのできる設備が整っていて、みんなで食事をしたりくつろいだりすることができるそうです。安定した暮らしの中で毎日規則正しく暮らし、共同生活のルールを学び、教育を受けることもできる環境です。
日本の刑務所の状況とは全く違うことに驚かされますが、ここでは刑罰を与えることよりも、受刑者が更生して社会復帰できることを一番の目的としているためです。
受刑者は、そこでの生活によって精神的な安定を手に入れることができ、社会に戻ることができるのだといいます。
また法務省での取材では、ほとんどの犯罪は、「愛情、教育の不足、貧困」の3つの原因があるために起こるのだという話があったそうです。
そのうえで犯罪者に対して社会がするべきことはその不足を補うことであり、それが刑罰であるという考えです。
受刑者は、出所する時に家と仕事を与えられて社会に戻ることができるため、再び罪を犯してしまうことはなく、その結果この国の犯罪数が減ったのだともいいます。
森さんは、日本の再犯率の多さや現在起こっている厳罰化に対し、悪を許せずに排除する考え方が強まることで起こる弊害といえるのではないか、という話をされました。
また、多田さんも過去にレジデンスやリサーチで、ノルウェーに滞在していた時の話をされました。そこではアーティストがラジオで展覧会の報道をしたり、日曜画家のための制作スペースがあったり、ゆとりがあってアーティストの在り方が日本とは大きく違うと感じたのだといいます。
対談は、ノルウェーでの刑罰の考え方や多田さんが体験したアートの環境を例に、日本という国を別の角度から俯瞰してみることへ話が進みました。
日本では組織や集団でいることの意識が強いところがあり、多様な考え方を受け入れない傾向がみられるのではないかということ。また、一つのことしか知らなければそれだけしか受け入れなくなってしまうが、もっと他国など違う環境に出て、多様な考えと比べてみることが必要だろうということ。それらのことは、見る人によっていろんな解釈をもたらし、一つの考え方にとどまることのない作品の在り方についてへと話がつながっていきました。
暴力や憎しみ、さまざまな感情、生や死など人が逃れられない普遍的な事柄を感じながら制作する多田さんの作品の話を交えながら、参加者の皆さんにとっても、多様な考えを受け入れることのできる個人や社会に目を向けるきっかけになったのではないかと思います。
多田さん 滞在中⑥
2018.6.12.火曜日
多田展関連ワークショップ「面打ち」
2018.6.3.日曜日
5月26日、27日は、多田友充展関連ワークショップ「面打ち」を行いました。
以前よりACACのワークショップに参加したことのある多田さんが、参加者と一緒に何か集中してものを作る時間を設けようということでの企画となりました。
講師は、三沢市在住の井上京香さんです。
井上さんは、以前三沢に勤務していたお兄さんのところに遊びに来て、三沢の地が気に入り住み始めたそうです。今は三沢市で「氈鹿(あお)」という能面ギャラリーのある喫茶店を営みながら、能面を制作したり、各地で面打ちを教えたりされています。
能面を彫ることを「打つ」というそうで、のみと彫刻刀を使って一つの角材から「粗彫り」、「中彫り」、「仕上げ彫り」の三つの工程で進められます。
通常、能面の大きさは長さ20cm程ありますが、今回は2日間の制作で通常の半分の大きさでの「面打ち」です。
木材は、井上さんが能面を打つときに用いている、香りもとてもいい青森ヒバ。
始めに井上さんが用意された正面と横の型紙を、木の面に置いて写していきます。
それからさっそく平のみでどんどん角を落として粗彫りをしていきます。
みなさんで一斉に彫りはじめると、ワークショップスタジオではたくさんの木づちの音が響いていました。
かまぼこ状の形になると、のこぎりで鼻や口の部分に切り込みをいれていきます。
左右対称になるように、それぞれの長さを測るにはコンパスが便利です。
顔の部分を彫る段階では、鉛筆で下書きを繰り返しながら、丸のみ、平のみ、彫刻刀それぞれを使い分けて彫り進めていきます。
額や鼻、唇がそれぞれどのくらいの高さか、面と型を見比べて、上下をひっくり返したりいろんな角度から見たりよく観察することが大切になります。
顔の部分ができてくると、裏側を彫って、キリで目と口、鼻に穴を開ける工程です。
裏を彫る時は、おもて面でののみの使い方とは異なり、手首を動かしてくりぬいていきます。
穴を開けて仕上げ彫りで顔の細部ができてくると、だんだんと表情が現れました。
参加者のそれぞれの進み具合に合わせてところどころ井上さんがアドバイスをしてくれるので、参加者のみなさんは時間を忘れて自分のペースで制作できたようです。
楽しく集中できたので、二日間があっという間に過ぎたという声もありました。
少数の定員のため、ご参加できない方もいらっしゃいましたが、次回のワークショップにもぜひお申し込みください!
多田さん 滞在中⑤
2018.5.29.火曜日
多田さん 滞在中④
2018.5.13.日曜日
多田友充展「性根の腐った誠実さのかけらもない人間どもの流す情報を、ただただ鵜呑みにして自らの頭で考えることもせず無邪気に人に暴力を振るう、たましいのない空っぽの操り人形どもは、果たしてこの世界に存在することに恥ずかしさや情けなさを感じることはあるのだろうか☆ 卍」、ヴィジョン・オブ・アオモリvol.16-Part1
「柿崎真子 | アオノニマス 潜」、Part2「ある、晴れた日に」を開催中です。
ブログでは、多田さんが滞在中に撮った写真を紹介しています。
展覧会と併せてご覧ください。