トークセッション「美術と社会ーあなた/わたし/こども/おとな」
2017.9.16.土曜日
船井美佐展の最終日9月10日(日)はトークセッション「美術と社会-あなた/わたし/こども/おとな」を開催しました。
トークには船井さんが2014年に参加した乳幼児向けの展覧会「ワンダフルワールド」を企画した船橋市学芸員(元東京都現代美術館学芸員)の山本雅美さんにもご参加いただき、美術と社会の関わりについてお話しいただきました。
2部構成の第1部では、トーク参加者3名がそれぞれの活動を紹介しました。
船井さんは2007年にACACのレジデンスプログラム「裏糸」に参加した際にワークショップやトークをおこなったことをきっかけに、アーティストの社会的責任について自覚するようになったと言います。
その後、プライベートではお子さんを出産し、作家としてはパブリックアートやアートプロジェクトの仕事を重ねるようになり、それを通じて作家・作品・美術・美術館が社会でどんな役割を持っているのかを考え続けています。例えば、パブリックアートでビルの一部に作品が設置される場合、作品はそのビルに関わる人達の思いの象徴としてあることや、アートプロジェクトでは美術の専門家では無い人々と対話しながら作品が作り出す場の感覚を共有していくことができる、などをお話しいただきました。
対して山本さんからは「ワンダフルワールド」展を中心にお話しいただきました。
同展では「こどものワクワク、いっしょにたのしもう みる・はなすそして発見!の美術展」というサブタイトルが付けられています。誰かと一緒に同じ作品を見ても、それぞれが違うものを見ている、それぞれの価値観があることを発見してほしいという願いが展覧会に込められています。
また、山本さんからは「公園」というキーワードが出され、美術館も公園のように誰でも行っていい場所であって、みんなの居場所であってほしいというお話がありました。
その後、ACACの学芸員よりACACの教育普及活動をご紹介し、美術を通した教育と社会の中の場作りという2点を目指して活動していることをお話ししました。
第2部のトークセッションでは、日本の美術館の普及活動はまだまだ足りていないということ、その理由をたどると日本に美術館が導入された歴史とも関わることや、子育て世代で美術館に行きたくても行けない人たちをつなぎとめ、生涯に渡って継続的に美術館に行き続けられることが必要であるということ、また鑑賞の場を作るために人を介することが有効だ、などの意見が出ました。
ここではすべてをご紹介しきれませんが、今回のトークセッションはまとめて来年3月発行のACACの記録集「AC2」に掲載する予定です。そちらもどうぞお楽しみに。
9月9日船井WS「いろのらくえん-モビールづくり」
2017.9.15.金曜日
少し遅くなりましたが、9月9日に開催した船井美佐さんのワークショップ「いろのらくえん-モビールづくり」のレポートです。
船井さんが出品しているすべり台や木馬の作品のように、動物や植物に切り抜かれた色面を構成して絵画空間を作るワークショップです。
まずは船井さんから展覧会に出品している作品のことや、各地にあるパブリックアートについてのお話がありました。
それからパーツを選びます。
土台になる丸いものを1つ、それに組み合わせる小さいものを6個選びます。
それから、色を選びます。
今回はアクリル絵の具を使いました。
子供が絵具を使うとき、含ませる水の分量の調節が難しいので、ボトルから出したらそのまま使えるようになっているものを使いました。
基本的に1つのパーツに1色塗ります。
色の選び方もそれぞれ。
小さい女の子が渋いカーキや紺を選んでいたり、パステルカラーでまとめたり。
基本1パーツ1色ですが、色を塗り分けたり。
インコを飼っている人がインコの顔を描いたり。
裏表色を塗ったら、糸でつないでいきます。
パーツには元々穴が開けてあり、そこに糸を通してつないでいきます。
どこにどのパーツをつなぐかも重要ですが、糸の長さによってもだいぶ構成が変わってきます。
どのパーツにどの色を塗るかによっても全体の印象がガラリと変わってきます。土台の丸いパーツが面積が大きいので影響が大きいということがあります。逆に小さいパーツにビビッドな色を入れてポイントにした人もいました。
また、選ぶ色は本当に人それぞれ異なり、船井さんによるとその人が来ている服の感じに似ていたり、何となくその人自身を表すように見えるとのこと。
大人には思いつかない子供の配色には、船井さんも親御さんも感嘆していました。
船井さんがドローイングを描き、参加者の方が色を塗り、協同制作のようなワークショップにもなりました。
それぞれのご家庭で持ち帰った作品を楽しんでいただけたら嬉しいです。
夏AIR 撤収
2017.9.12.火曜日
9月10日夏AIRの2つの個展が終了しました。
子供をはじめ、たくさんの方々が観て、そして体験し楽しんでいた展示室では
今は撤収作業が進められています。
地元の大工さんとともに、船井さんの滑り台の作品を解体作業中!
こちら現場の米次郎です!vol.7
2017.9.6.水曜日
7月29,30日船井美佐WS「いろのらくえんー丸と穴」
2017.8.2.水曜日
7月29(土)30日(日)は船井美佐さんのワークショップ「いろのらくえん-丸と穴」を開催しました。
文化施設や公民館などで企画される様々な造形講座は小学生以上向けのものがほとんどですが、今回は未就学児も参加できるよう、3歳以上から参加できるようにしました。
今回は5mのビニールキャンバスに、船井さんがご自身の作品にも使用する塗料を使ってみんなで絵を描きました。
最初に船井さんから作品のお話をしていただきます。
船井さんは絵画とは何かを一貫して追求し、奥行きが無いフラットな色面を構成したり、その上にドローイングをしたりということを試みています。
今回のワークショップでもみんなで大きな画面に絵を描いていって、最終的に全てが混じり合って大きな色面が出来る予定です。
また、普段の制作では作品の中に入り込んで行くことを考えて鏡を用いたり、体験型の作品を制作していますが、今回のワークショップも、自分の体より大きなキャンバスの上で自由に塗料と戯れることで、絵と一体化するような体験が用意されました。
お話が終わったら早速好きな色を選んで描き始めます。
紙皿1つに色を1つ入れて、別の色を使いたい時は新しいお皿に入れて筆も新しくします。
塗料は赤と黄を基調に準備しました。
色数が多いと混ざった時に濁ってしまうという理由が1つ。
そして、青森の人の情熱やお祭りの色から、船井さんにとっての青森の色は赤なんだそうです。
子供さんの年齢によって描くものも様々。
年齢が高いと自分が思い描いた模様や形を描いていき、小さいお子さんは手を動かして画面に色が乗るのを楽しんでいる様子。
途中で船井さんが大きなローラーで画面中央に線を引いていきます。
そうすると、「こっちも描いていいんだ!」と描く範囲が広がっていきます。
だんだん自分が描いた形が隣と混ざって、混ざった上に更に絵の具を乗せて絵の具の重なりを楽しんだり。
手に絵の具を塗って手形を付けていったり。
手形の延長で、手で絵の具を混ぜて感触を楽しんだり。
絵を描くというより、絵の具と戯れることと画面の中に没入していくように見えました。
最後は気に入った所を丸く切り抜き、みんなで鑑賞会をしました。
その後、キャンバスを野外ステージに運んで穴から顔を出して記念撮影。
ワークショップを通して、最初は手元に小さく描いていても、周りの様子や船井さんの誘導によってどんどん、こんなこともしていいんだ!こっちにも描いていいんだ!と子供さんがどんどんのびのびと自分を解放していく様子が見られました。
鑑賞会でも、発表者を募っても最初はみんなモジモジしていましたが、1人、2人と発表するうちにどんどん発表者が増えて行きました。
そんな子供達の様子を見て、子供達にここまでやってもいいのだ、こんなこともしてみていいんだ、と本人達が気づかずに奥にしまっている可能性を様々な刺激によって引き出してあげることが、いわゆる「成長」につながるのではないか、
つまり、成長とは外から何かの技術を獲得することではなく、中にあるものが表に出てくる状態ではないかと考えさせられました。
オープニング・アーティストトーク
2017.7.29.土曜日