冬の芸術講座2019 中島佑太ワークショップ「ACACで行く!見えない旅2日間」

2019.3.27.水曜日

3月9日と10日は中島佑太さんによる「ACACで行く!見えない旅2日間」を行いました。
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「見えない旅」は、アイマスクで目隠しをして歩いてみることから始まります。
ラウンジに集合した参加者は、目隠しをして歩いてみるときの注意事項を中島さんから聞いた後、誘導する人の付き添いのもと目隠しをしたまま創作棟まで歩いてみることになりました。

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アイマスクをして見ることができなくなると、手を体の前に出して、自分が進む先に物が無いかを確かめたり、誘導してくれる人の声をよく聞こうとしたりして、感覚をよく研ぎ澄ませます。
誘導する方は、どう声をかけたら目隠しをした人が道に沿って歩けるか、道にはどんなものがあるのか、それらを伝えることに一生懸命。
この日は天気もよく、創作棟へ移動する途中の長い廊下では、ガラスが反射して小さな虹のようなスペクトルがいくつも出ていました。アイマスクをしている人は見られずに、虹が見たい!と大騒ぎ。

創作棟に到着し、見えない時にはどんなことが起きたのかをみんなで話し合いました。
触ってみることでいろんな感覚が得られる/匂いがする/温度を感じる/段差や坂道、カーブなど足の感覚が頼りになる/振動、風がヒントになる、、などの意見がありました。

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大きな創作棟には長い廊下があります。再び目隠しをする人と誘導する人に分けて、みんなで廊下を通って部屋の周りを歩いてみました。
誘導する人は、道がどうなっているのか、どんなものがあるのか、あと何歩で段差があるのかなど、周りをよく見て言葉で説明します。

目隠しをして歩く人はその誘導を聞き、また音の響き具合や気温の変化を感じながら歩いていきました。

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外では雪を踏んだときの音や足の感覚を楽しみました。いつも見ている雪は、砂浜や砂漠であるようにも感じられることができました。

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あえて目隠しをすることで、聞こえてくる音や声、皮膚で感じる温度、ものの触感、歩くときの足の感覚などから、その場所がどんなところなのか、想像が大きく広がります。
旅は見たいものを見に行くものだけれど、ここでは見えないことから想像して、自分たちで見たい旅を作っていきました。

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目隠しをして気づいたことを思い出しながら、画用紙やペン、スリッパ、テープなどの材料を使って旅作り。
創作棟にはいろんな道具や材料があります。用意された材料の他にも使ってみたい物があれば、使ってもよいものをスタッフに聞いて材料と組み合わせてみました。

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それぞれ作った旅をどこに置いたら一番いいかを考えます。
天気もとても良かったので皆さん外の長い廊下に並べました。

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いろんな触感が楽しめる温泉、虹がかかっている雲の上の国、電車、ヨットの浮かぶ海では、波の音も聞こえました。

ツアーのように順に巡って、それぞれの作者が旅を案内してくれました。

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2日目。
創作棟で1日目と同じように目隠しをして歩いてみることから始まります。
前日の参加者もこの日が初日の方々も、練習として目隠しをしたままテーブルの周りを一周してもとの席に戻ることができるか試してみました。
テーブルや椅子の位置をたどりながら歩くのもなかなか難しいものです。

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 雪解け水が屋根から流れてくる様子を滝に例えてみたり、目隠しをして前日に作った波の音を鳴らしながら外にある雪の上を歩いて、足で感じるサクサク感から砂浜を想像してみたりしました。

普段見ているものを別物に置き換えることで、違う場所を作ることができるのではないか。2日目は、周りにあるものを何か別なものに見立てることに挑戦です。

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見えない旅では感覚をすまして周りを観察し、いろんな素材を見つけて試してみることが大事。スタッフや親御さんと一緒に、普段使わない素材や方法を試して思い思いに制作を楽しみました。

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旅に必要な電車と駅、猫に手紙が届けられるポスト、おみくじができる神社、素材屋さんにはまつりの旗が立てられました。

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目隠しをしても歩きやすいように、ドアの段差につけられた跳ね橋。

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きれいな色で描かれた万華鏡を覗くと、移動しなくても周りの風景を変えて見ることができました。

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自由な発想から実現まで、制作に集中できたようです。

想像することを大切に、自分たちで違う場所、「旅」を作り出す2日間でした。

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冬の芸術講座2019 版画ワークショップ「アクアチントによる濃淡と階調の美しさ」

2019.3.26.火曜日

3月初めは、版画のワークショップ「アクアチントによる濃淡と階調の美しさ」を行いました。

講師は、腐食銅版画の技法で繊細な線や形を表現する漆戸美枝子さんと、アルミ板を使ったドライポイントを制作し国内外で作品を発表している橋本尚恣さんです。

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2日間の講座のうち、1日目は銅板の腐食を行いました。
まずは漆戸さんと橋本さんから制作方法について、腐蝕銅版画の線と面の表現にはそれぞれ異なる技法を使うという説明がありました。

ニードルなどで描かれた線を用いるエッチングという技法と、散布した松ヤニを使って面を表現するアクアチントという技法を説明してくれました。
線と面、腐蝕させない部分にグランドという防腐剤を塗布することと、腐蝕液につけることを繰り返すことで、線の強弱や面の色のグラデーションを作っていきます。
腐蝕液につけて腐蝕させる時間を長くするほど深く腐刻されるため、刷った時に線は強く、面の色は濃く表すことができます。 

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参加者の方々には、架空のカレンダーをテーマにした下絵の準備を予めお願いしてありました。
カレンダーには季節を表す絵や数字、月や曜日を示す文字が含まれます。思い入れのある季節や自分の誕生月をもとにするなど、数字や文字を合わせた自由な発想の絵を描いてきていただきました。

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エッチングでは、銅板の表面にグランドと呼ばれる防触液を塗って乾かし、下絵を転写し、ニードルで転写した下絵を線描していきます。

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ニードルでグランドを剥がすように線描をし終えたら、腐蝕液に浸けます。
さらに、線を強くする部分を残し、段階的なグランドの塗布と腐蝕を繰り返すことで線の強弱を出します。

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アクアチントでは、松ヤニの粉を箱の中で巻き上げて銅板の上に均等に散布したあと、熱して粉を定着させ、エッチングと同じようにグランドの塗布と腐蝕で濃淡を調整しグラデーションを作っていきます。

今回は、エッチングで10分単位、アクアチントは20秒単位で腐蝕液につけてみました。

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長丁場の制作の合間には、スタッフによる特設カフェコーナーが憩いの場となりました。

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二日目は刷りの工程です。
プレートマークを整えたら、インクが固くならないように電気ウォーマーの上に版を置いてインクを詰めていきます。
充分に詰めたら寒冷紗で拭き取り、水で湿らせておいた紙を置いて刷っていきます。

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創作棟のまん中にある銅版画スタジオには、日本一大きいと言われる大型プレス機があります。このプロ仕様のプレス機を使うには、紙の準備からプレス機の圧の調整、刷りの具合など、専門的な技術が必須となります。
今回は、プレス機の設置当初の銅版画研修会にも携わったことのある橋本さんの指導のもと、このプレス機を使って刷ることができました。

各々の版から架空の年月を表すような一枚の版画、カレンダーにすることができないかという試みです。
まずはどう並べるか、紙と同じ大きさのビニールの上にレイアウトを決めて印をつけていきました。

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シートをプレス機のベッドプレートの上に敷いてそれぞれでインク詰めをした版を並べました。

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数人がかりで紙とフェルトを順にゆっくりと置いていき、フェルトの状態を見ながら、電動ローラーを動かしていきます。
インクの状態や版の並びを変え、約2m幅の版画を2枚刷りました。

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最後は作品を見ながら講評会。
難しいテーマでしたが、それぞれの捉え方によって個性が大きく表れたように思われました。腐蝕と刷りという初めての技法で思い通りにいかなくとも、偶然のイメージの面白さを見つけられた参加者もいました。

線描、松ヤニの定着、腐蝕、インク詰め、拭き取り、紙、刷り。
多くの工程にある要素によって、異なる画が作れる魅力と奥深さを体験することができたのではないでしょうか。

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2日間なかなかハードでしたが、講座終了後も刷りを続ける参加者もいました。
楽しみながらも制作に集中することができたようです!
最後まで丁寧にご指導いただいた講師お二人に感謝です。

大型プレス機で刷った版画は、創作棟の銅版画スタジオ横の廊下に展示します。
窓越しからでもご覧いただけます。

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冬の芸術講座2019 関川航平ワークショップ「人が人を見る」

2019.3.19.火曜日

2月3月は冬の芸術講座2019「あそびの余白」を行いました。
全3講座の様子を順に掲載します。

1つ目はアーティスト関川航平さんによるワークショップ「人が人を見る」です。
2日間の連続講座のうち、1日目は互いを知らない人同士同じ部屋で過ごしてみる、ということをしました。

それぞれ異なる時間と場所を指定されて来た参加者は、関川さんから一つずつインスタントカメラの「写ルンです」が渡され、室内では他の参加者と話をしないことと、人物を入れた風景を撮ること、という2つのルールが説明された後同じ部屋に集められました。お互いが誰なのかわからないまま、一つの部屋に集まり1時間半の間ひたすらそのルールに従って過ごします。

例えば、電車の中などでは見ず知らずの人同士が話をすることもなくある一定時間同じ場所にいることはありますが、初対面の人同士が挨拶もせずに見合ったり写真を撮ったり撮られたりする状況はないものです。
ここでは非日常の出来事を起こして違和感を体験します。

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画像はインスタントカメラで参加者同士が撮影し合った写真です。
関川さんが会場のマイクやスピーカーを使って音楽を流すとその場の空気がかわり、参加者も置いてあったライトを動かしたり思い思いに行動をし始めました。
その空間は自然と演劇か舞台の中に入って人を見ているような、あるいは自分が見られる側になっているのか、演者と観者が入り混じっているような状況を起こしていました。

午後は関川さんの作品の話を聞いた後、
参加者同士はまだ互いが誰であるかということは話さないまま、複数の人達が会話をしている様子を反対側から客観的に見る、ということをしました。

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たわいのない会話をしている様子を見ているうちに、お互いが誰かはわからなくても、その人の性格やどんな傾向があるかなどが見えてきました。

人と初めて会った時にその人の名前や何をしている人なのかを知ることが通常ですが、それらの情報を排除して、ワークショップのタイトル通りひたすら人を見てみる、そして知り合いになる、という試みだったのです。

非日常の状況を作り、人を「見る」行為を確かめる機会となったと同時に、知ることが言葉の情報に偏っている現状、何をもって人が誰であると言えるのかという問いを目の当たりにしました。
また、人から名前や背景がなくなると何かを演じているようにも見えてくる、逆を言えば何かを演じること、パフォーマンスすることは個を無くし人に想像する余地を与えることでもあるのかと考えさせられるようでした。

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2日目は、人が何かをしているところを見てそれを文章に書き出してみる、ということをしました。引き続き「人を見る」ことは同じですが、それを文章化することで見えるものをどう認識しているのかを探ります。

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見えるものを見えるままに書き出すこと、次から次へと変化する出来事を瞬時に書き起こしていくことの難しさを実感しながら、ひたすら書いて読み合せをしていきましす。

お互いに読んでいくうちに、参加者それぞれの言葉の描写には具体的または抽象的な表現があることがわかり、さらに焦点をあてる範囲、時間の捉え方などにも様々な違いが出ることを確かめていきました。
中でも抽象的なものの見方では、見る人/書く人による想像が広がる場面も出てきて、視点と言葉の掛け合わせの多様さが顕著に表れました。

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2日間の「人が人を見る」ということ。

見ることから言葉による認識、また言葉から見えてくる認識によって、参加者それぞれが新しいものの見方を見つけたように思います。

言葉の掛け合わせで視点の動きや情景を描き出している関川さんの短編小説コラム「目の泳ぎ」は、『雛形』というウェブマガジンで読むことができます。
https://www.hinagata-mag.com/auther/sekigawa

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冬の芸術講座2019のお知らせ

2018.12.20.木曜日

来年の2月3月に行う冬の芸術講座のお知らせです。

⇒ http://www.acac-aomori.jp/workshopcat/workshopja/

4人のアーティストをお迎えし、異なるジャンルで3つの講座を行います。
それぞれ参加したい講座を探してみてください!

広報のチラシは年初めに各施設などにお配りします。
見つけたらお手にとって、よろしければお持ち帰りください!

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関川航平強く移動する》2017/パフォーマンス                                                                                                                                                                                                              撮影:市川勝弘、画像提供:スパイラル/株式会社ワコールアートセンター

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中島佑太《LDK ツーリスト》2018年、主催:アーツ前橋、撮影:木暮伸也

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漆戸美枝子《on the spot 1》2002年、銅版画

 

 

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